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SPIRITS JOURNAL

ラム酒に合うおつまみの選び方|色より原料・香り・樽・甘さ

ラム酒に合うおつまみの選び方|色より原料・香り・樽・甘さ

ラムに合うおつまみは「色」では決まらない|原料・香り・樽・甘さで選ぶ

ホワイトラムには軽いサラダや果物、ダークラムには味の濃い肉料理やチョコレート。ラムに合うおつまみを紹介する記事には、色で分けたこんな対応表がよく出てくる。

覚えやすい分け方ではある。ただ、白いラムと濃い色のラムを並べて、その色が何によって付いたのかを考えはじめると、この表の土台は少し心もとなくなる。

ラムの色が教えてくれるのは、主に樽と仕上げのことだ。 合わせる食べ物を左右しているのは、原料、発酵と蒸留、樽、そしてあとから足される甘さという、別々の四つの軸である。

白いラムも、樽をくぐっている

バカルディ スペリオールは透明なホワイトラムだが、メーカーの説明では、アメリカンホワイトオークの樽で熟成させ、炭を使った工程で仕上げている。樽で過ごした時間があっても、色は抜けることがある。

反対向きの調整もある。EUの規則は、色を整える目的に限って、ラムにカラメルを加えることを認めている。濃い色は長い熟成の結果かもしれないし、仕上げで揃えた結果かもしれない。

色から熟成年数を逆算できない理由は、ラムの種類を呼び名の軸から整理した記事で扱った。ここで考えたいのは、その先だ。色が当てにならないなら、何を手がかりに食べ物を選べばいいのか。

原料の違いは、香りの性格と飲む時間を変える

ラムの多くは、砂糖を取り出したあとに残る糖蜜から造られる。一方で、サトウキビの搾り汁をそのまま発酵させるラムもある。EUの規則では、搾り汁だけを原料とし、フランス海外県かマデイラの地理的表示に結びついたものが「アグリコール」を名乗れる。

原料の差は、蒸留と熟成を経ても消えない。ミュンヘン工科大学のグループは、高価格帯のラムのうち、搾り汁由来の25本と糖蜜由来の26本から香気成分を取り出して分析した。その成分のパターンだけで、搾り汁由来のラムをすべて正しく判別できたと報告している。

アグリコールの代表的な産地であるマルティニークでは、アグリコールに砂糖とライムを合わせたティ・ポンシュが、ふつう食前酒として飲まれる。添えられるのは、塩ダラの揚げ物アクラ、クレオール風のブーダン、辛味の効いた軽食だ。

産地では、アグリコールは甘いものより、塩と油と辛味の隣に置かれてきた。 家で試すなら、塩を振った揚げ物や、レモンを搾った白身魚のフライあたりがその延長にある。

香りの強さは、樽に入る前に決まりはじめる

同じ糖蜜から始まっても、香りの量は造り方で大きく変わる。同じグループが糖蜜から完成品までの各段階を追った研究では、果実を思わせる香りをもつエチルエステル類が発酵の段階で大きく増え、熟成中の増え方はそれより小さかった。対象は一つの製造工程だが、果実のような香りの成分が、樽に入る前に大きく積み上がることがうかがえる。

ラムを「ライト」「ヘビー」と呼び分けるのも、主にこの発酵と蒸留の違いによる。ヘビーなラムの産地として名前が挙がることの多いジャマイカでは、たとえばハンプデン蒸留所が、野生酵母による8〜15日の発酵を行っている。蒸留後に残る液(ダンダー)が、果実系エステルのもとになる酸を供給するという。

香りの量は、そのまま食べ物との釣り合いにつながる。軽いラムは料理の邪魔をしにくい代わりに、香りで料理とつながる力も弱い。炭酸で割って食中に回すと持ち味が生きる。香りの強いラムは淡い料理を覆ってしまいやすい。燻製のナッツ、スパイスを効かせた肉、よく熟した果物のように、食べ物の側にも同じくらいの香りの強さがほしい。

樽の香りは橋になり、甘さは見えないまま重なる

樽熟成は、バニラや焼き菓子を連想させる香りを足す。サトウキビの搾り汁から造ったラムを分析した研究でも、樽に由来するウイスキーラクトンやバニリンが、香りへの寄与が大きい成分の上位に入っていた。

ナッツやドライフルーツ、焼き目のついた料理には、これと同じ方向の香りがある。共通する香りは、ラムと食べ物の間に橋をかける。ただし、ラムとデザートの相性を味覚の研究から読んだ記事で紹介したとおり、香りは甘さの感じ方そのものを強めることがある。樽の効いたラムに甘い菓子を重ねると、甘さが前に出すぎる場合もある。

甘さは、四つの軸のなかでいちばん見えにくい。EUの規則は、味を丸める目的でラムに甘味を加えることを認め、その上限を1Lあたり20g(転化糖換算)としている。日本の表示制度では、酒類は栄養成分の表示を省略できる。糖の量をラベルから知る手段は、ほとんどない。

加糖されたラムは、それ自体がすでに甘さを一つ抱えている。合わせる側に甘いものを重ねるより、塩気や酸味で輪郭をつけたほうが、互いの味が分かりやすい。モデル実験では、クエン酸が甘味の感じ方を弱めることも確かめられている。甘さが分からないラムには、塩気のあるナッツや酸味のある果物から合わせると外しにくい。

ラベルから読める軸、読めない軸

四つの軸のうち、ボトルから確かめられるものは多くない。

  • 原料:「Rhum Agricole」は、サトウキビの搾り汁から造ったラムに使われる言葉だ。
  • 発酵と蒸留:「Pot Still」の表記や産地名が手がかりになる。ただ、何も書かれていない商品も多い。
  • 樽:年数表示が手がかりになる。ただし、ラムのラベルの数字は同じ物差しとは限らない。
  • 甘さ:日本のラベルからはほとんど読めない。メーカーが無添加を明言していなければ、飲んで確かめるしかない。

冒頭の対応表に戻る。色で選ぶのをやめると、ボトルに向ける問いが変わる。原料は搾り汁か糖蜜か。香りはどこまで強いか。樽はどれだけ効いているか。甘さは足されているか。

全部に答えが出なくてもかまわない。一つ分かるだけで、皿の上の候補はずいぶん絞られる。色はボトルの外側の情報で、食べ物を選ぶ手がかりは、その内側にある。

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