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SPIRITS JOURNAL

ラムとデザートはなぜ合う? 甘味・酸味・香りの科学

ラムとデザートはなぜ合う? 甘味・酸味・香りの科学

ラムとデザートは、なぜ甘すぎないのか

ラムを飲んだあとに、チョコレートをひとかけら。あるいは、ラムレーズンのアイスクリームに、同じラムを少しだけ。どちらも甘いのに、甘さが単純に二倍になったようには感じないことがある。

甘いもの同士を重ねているのだから、口の中は砂糖の足し算になるはずではないのか。

その前提を疑うところから始めたい。ラムの「甘さ」と、液体に含まれる糖の量は同じものではない。

ラムの「甘さ」は、糖分だけでは決まらない

サトウキビや糖蜜に含まれる糖は、まず発酵の材料になる。その後には蒸留があるため、原料が甘いことと、瓶に入ったラムにどれだけ糖が含まれるかは直接つながらない。

完成後の甘味付与についても、ルールは市場ごとに異なる。EUでは、ラムへの加糖は味を丸める目的に限られ、転化糖換算で1Lあたり20g以下。一方、米国では別の制度設計が取られ、糖などは一定範囲の着色・香味・ブレンド材料として扱われる。世界共通の「ラムの糖分ルール」があるわけではない。

そして糖の量とは別に、切り分けるべきものがある。私たちが実際に感じている「甘味」そのものだ。

アルコールがある時点で、甘味は単独ではない

エタノールを水に溶かした液体を4〜48%まで変えて評価した研究では、32%と48%で灼熱感やピリつきが最も強い感覚になった。甘味も知覚されたが、その強さは弱い。ラムの一口は、最初から「甘味対甘味」の勝負ではない。

エタノールとフルクトースを組み合わせた別の実験でも、5%、13%、23%とエタノール濃度が高くなるにつれて、甘味の評価は下がった。甘味は成分量に比例して積み上がるだけの感覚ではない。

ただし、この実験の上限は23%。40%前後のラムへそのまま外挿し、「度数が高ければデザートの甘さを切る」と法則化することはできない。

酸味と苦味は、同じ「甘さ切り」ではない

デザート側にも甘味以外の軸がある。その代表が酸味だ。

2023年の研究では、ショ糖とクエン酸を別々に舌へ与えた条件でも、クエン酸があるとショ糖だけの場合より甘味の評価が低下した。少なくともクエン酸を使ったモデルでは、酸味には甘味の感じ方そのものを弱める作用が確認されている。

苦味は少し事情が違う。ショ糖、クエン酸、食塩、キニーネを組み合わせた研究では味同士の抑制が見られたものの、ショ糖の甘味は比較的抑制されにくく、むしろ他の味を強く抑える側だった。ビターチョコレートの苦味を、単純に「ラムの甘さを消すもの」と説明するのは難しい。

香ばしさも同じだ。ここで挙げた研究からは、ロースト香が甘味を直接弱めるとは言えない。役割はむしろ、甘味とは別の香味の軸を加えることにある。

香りは、甘さを弱めずに組み合わせをつなぐ

ここで話が反転する。香りは甘さを弱めるどころか、強めることがある。

129名を対象にした実験では、バニラの香りを加えることでショ糖の甘味評価が上がった。別の研究でも、ショ糖とイチゴ、ショ糖とレモンのように香りと味の方向が合う組み合わせでは、甘味の増強が確認されている。似た香りは、甘味を減らさずに全体をつなぐことがある。

熟成ラムにも、その接点になり得る香りがある。15年熟成のキューバ産ラム1点を分析した研究では、バニリン、オークラクトン、果実系エステル、オイゲノールなど、バニラや果実、樽、スパイスを連想させる成分が香りへの寄与度の高いものとして検出された。ただし、これは特定の一本の分析であり、熟成ラム全体の「成分表」ではない。

ここで挙げた研究の多くも、水溶液などを使ったモデル実験で、ラムとデザートそのものを直接検証したわけではない。それでも見えてくるのは、ペアリングを「甘いか、甘くないか」だけで考える限界だ。

次に見るべきなのは、何が甘く感じさせているのか、どこに酸味や苦味などの対照があるのか、そして両者をつなぐ香りがあるのか。その三つを分けて眺めると、ペアリングは「相性」から「設計」の問題へ変わる。

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