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国産ウイスキーはすべてジャパニーズウイスキー? 定義とラベルの読み方

国産ウイスキーはすべてジャパニーズウイスキー? 定義とラベルの読み方

国産ウイスキーはすべてジャパニーズウイスキー? 定義とラベルの読み方

日本の酒税法では、ウイスキー原酒にアルコールやスピリッツを加えても、混ぜたあとのアルコール分の1割以上が原酒に由来していれば、品目は「ウイスキー」のままだ。裏ラベルの「品目 ウイスキー」という表示は、アルコール分の大半がウイスキー以外という中身まで含みうる。

では「ジャパニーズウイスキー」はどうか。日本の会社が造り、日本語の名前が付き、日本で瓶に詰められていれば、そう名乗れるのか。その線を引いてきたのは法律ではなく、業界の取り決めだった。そして2026年10月30日、その線を国の制度に移すための意見募集が国税庁で始まった。

法律が決めているのは「ウイスキー」の入口まで

酒税法がウイスキーとするのは、発芽させた穀類と水で穀類を糖化し、発酵させて蒸留した酒だ。モルトウイスキーとグレーンウイスキーがこれに当たり、蒸留したときのアルコール分は95度未満と決められている。そこへアルコールやスピリッツ、香味料、色素、水を加えたものもウイスキーに含まれる。その場合の条件が、冒頭の「1割」だ。

この定義には、どこで造るのか、樽で何年寝かせるのかが書かれていない。日本の法律には、ウイスキーの熟成年数の下限がない。 スコッチの「3年以上」を前提にしていると、ここで話がずれる。2026年3月の参議院予算委員会でも、日本の酒類の定義が酒税を集める観点で決められてきたことが問題として取り上げられた。

「国産」が示すのは、最後に混ぜた場所

ボトルに何をどう書くかは、業界の公正競争規約が細かく決めている。原材料名には「モルト」「グレーン」と書き、穀類以外を原料とするブレンド用アルコールやスピリッツを加えた場合はそれも並べる。混ぜた比率まで書く義務はない。

見落とされやすいのが原産国の扱いだ。規約の運用では、ウイスキーの原産国は最終ブレンドを行った製造場のある国とされる。輸入したウイスキーに水を足して詰め替えただけのものを、国産のように見せることは禁じられている。それでも、海外の原酒を日本でブレンドして瓶詰めすれば、規約の上では日本が原産国になる。

「日本製」と「日本で蒸留された」は、ラベルの上では別の情報だ。 この隙間は海外で問題になった。日本洋酒酒造組合の理事長は、基準をつくった背景として二つの事例を挙げている。一つは、外国産の原酒だけを使った製品がジャパニーズウイスキーとして輸出されていたこと。もう一つは、日本の酒税法ではウイスキーに当たらない酒が、海外でウイスキーとして売られていたことだ。

「ジャパニーズ」の条件は、麦の産地より工程の場所

日本洋酒酒造組合は2021年2月、「ウイスキーにおけるジャパニーズウイスキーの表示に関する基準」を定めた。同年4月に施行され、それ以前からの表示を続けられる経過措置は2024年3月末で終わっている。ジャパニーズウイスキーと名乗れるのは、次の条件をすべて満たすものだ。

  • 原材料は麦芽、穀類、日本国内で採水した水に限り、麦芽を必ず使う
  • 糖化、発酵、蒸留を日本国内の蒸留所で行い、蒸留時のアルコール分は95度未満
  • 700リットル以下の木樽に詰め、日本国内で3年以上貯蔵する
  • 日本国内で瓶詰めし、詰めるときのアルコール分は40度以上
  • 色の微調整のためのカラメルは使ってよい

水は国内で採水したものと決められている一方、麦芽の産地には触れていない。線が引かれているのは麦の産地ではなく、仕込みから瓶詰めまでの工程がどこで行われたかだ。 新しい蒸留所が最初の3年間、自社の原酒をジャパニーズウイスキーとして売れないのも、この条件による。

基準は呼び名の抜け道もふさいでいる。「日本ウイスキー」のような言い換えや外国語に訳した場合も同じ扱いになる。条件を満たさない製品に、日本を思わせる人名や日本の地名、国旗、元号を使うことも禁じた。ただし、条件を満たさないことを明示した場合は除かれる。

弱点は、これが組合の自主基準だという点にある。加盟していない事業者には及ばず、国外の売り場にも目は届きにくい。組合が2024年に米国のロサンゼルスやニューヨークの店頭を調べると、基準を満たさないのにジャパニーズウイスキーと表示した商品が2割弱あった。

業界の約束が、国の制度になろうとしている

組合は2025年3月、基準を満たす製品に付けるロゴマークを定めた。あわせて、地理的表示(GI)の指定と、国による表示基準の整備を目指す方針も示している。2026年3月の国会では国税庁が、ウイスキーの製法や品質の表示基準について関係団体と協議しており、GIの指定にも取り組んでいると答弁した。

そして2026年10月30日、国税庁は「ジャパニーズウイスキー」をGIに指定する案を公表し、11月30日まで意見を募っている。案の生産基準は、自主基準とほぼ重なる。国内で採水した水と麦芽を使い、糖化から貯蔵までを国内で行う。700リットル以下の木樽で3年以上寝かせ、国内で容器に詰めるときのアルコール分は40度以上。色素はカラメルに限られ、加える量は必要最小限とされた。新たに加わったのは、出荷前に管理機関の確認を受ける仕組みだ。

GIに指定された名称は、産地以外の酒や生産基準を満たさない酒には使えない。翻訳した場合や、「型」「様式」といった言葉を添えた場合も同じ扱いになる。指定されれば「ジャパニーズウイスキー」は、組合の内側の約束から、組合員でなくても守るべき国のルールに変わる。 ただし現時点ではまだ案の段階で、指定の時期は示されていない。

棚の前で確かめるのは、名前より条件

ボトルを手に取ったら、まず表ラベルで「ジャパニーズウイスキー」が一続きの言葉として書かれているかを見る。基準は「ジャパニーズ」と「ウイスキー」のあいだに別の言葉を挟むことを認めていない。

樽の鏡板をかたどった「JW」のロゴも手がかりになる。ただ、店頭で使われ始めたのは2026年春からとされ、ロゴの付いていない適合品もありうる。

裏ラベルでは、原材料名にブレンド用アルコールやスピリッツが並んでいないかを確かめたい。日本語の銘柄名や日本の会社名だけでは、どこで蒸留された酒かは分からない。

一方で、基準を満たさないことは、劣っていることを意味しない。 海外の原酒を組み合わせたブレンドは、ブレンダーの設計を味わう一つのスタイルとして成り立っている。「ワールドブレンデッド」を名乗る製品もある。

国産ウイスキーが、すべてジャパニーズウイスキーというわけではない。その違いは味の上下ではなく、名前が何を約束しているかにある。ラベルの言葉が何を保証しているのかが分かれば、日本語の名前が並ぶ棚はずっと読みやすくなる。

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