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SPIRITS JOURNAL

ジントニックの味はトニックで決まる? 甘味と苦味の出どころ

ジントニックの味はトニックで決まる? 甘味と苦味の出どころ

ジントニックの味は、ほとんどトニックがつくっている? 甘味・苦味・香りの出どころ

ジン50mlに、トニック150ml。英国で売られているフィーバーツリーのトニックは、商品説明でこの割り方を勧めている。グラスの4分の3がトニックになる計算で、同社はこの比率を、割り材にこそこだわるべき理由として掲げている。

ただ、量の比率だけなら、ソーダで割っても同じ4分の3になる。それでもジンソーダとジントニックは別の飲み物で、同じジンでもトニックの銘柄を替えれば印象が変わる。トニックが握っているのは、液体の量ではない。

ジンが持ち込むのは、味より香りとアルコール

ジンのラベルにある「ドライ」は、雰囲気を表す言葉ではない。EUの規則では、ジンや蒸留ジンが「ドライ」を名乗れるのは、加えた甘味が1リットルあたり0.1g以下の場合に限られる。ロンドンジンには、名乗った時点でこの上限がかかる。

ボタニカルも、甘味や酸味を運んでくるわけではない。蒸留でジュニパーや柑橘の皮から酒へ移るのは、主に揮発しやすい香りの成分だ。糖やクエン酸のように揮発しにくいものは、ほとんど蒸留器の中に残る。

トニックの中身は、まるで違う。英国のスーパーに並ぶフィーバーツリーのプレミアム・インディアン・トニックは、100mlあたり糖が7.4g。オーストラリアで売られるシュウェップスのインディアン・トニックは8.6gだ。1リットルに直せば74g前後で、ドライジンの上限のおよそ700倍になる。原材料にはクエン酸と、苦味のもとになるキニーネも並ぶ。

1対3で割ると、度数40%のジンもグラスの中ではおよそ10%になる。糖は100mlあたり5.5〜6.5g前後で、その出どころはすべてトニックだ。ジントニックの甘味・酸味・苦味は、ほぼすべてトニックの原材料表に書いてある。

炭酸も、味の一部に数えていい。マウスを使った研究では、二酸化炭素は酸味を感じる細胞の表面にある酵素によって検知されていた。泡の刺激は、触覚と味覚の両方から受け取られていることになる。

ジンの側に残る味らしい味は、エタノールくらいだ。エタノール水溶液を濃度別に評価した研究では、8%と16%でいちばん強く感じられたのは苦味で、焼けるような刺激が主役になったのは32%以上だった。ストレートで飲んだときのジンの熱さは、割った時点でかなり退いている。

苦さは、苦味成分の量だけでは決まらない

甘味・酸味・苦味は、グラスの中でばらばらに感じられるわけではない。ショ糖、クエン酸、硫酸キニーネ、食塩を同じくらいの強さにそろえて混ぜた実験では、甘味がもっとも抑えられにくく、ほかの味をもっとも強く抑えていた。

酒に近い条件を使った研究もある。2008年にチェコの研究チームが、ベルモットを想定した溶液で、甘味・苦味・エタノールの関係を調べた。苦味のもとは0.01%の塩酸キニーネで、キニーネに換算すると1リットルあたり約90mg。消費者庁の調査で報告されたトニックでの最大使用量(65ppm)や、米国の上限(83ppm)と同じ桁にある。

この溶液にショ糖を10%加えると、苦味の評価は100を最大とする尺度で84から47まで下がった。そこへエタノールを8%足しても、苦味も甘味もほとんど動かない。苦味が目立って強まったのは、エタノールが32%のときだった。

炭酸も香りもない溶液で、糖もジントニックより多い。結果をそのまま当てはめることはできないが、向きは明らかだ。ジントニックくらいの度数では、甘さと苦さの釣り合いを決めているのはアルコールではなく、トニックの糖と苦味成分の配合だ。

糖を減らしたトニックで割ると苦味や酸味が立って感じられやすいのも、この釣り合いで説明がつく。フィーバーツリーの低カロリー版は、糖が100mlあたり3.8gと通常版のほぼ半分だ。苦味成分の量まで調整されているかは製品によるが、同じジンを割っても、舌の上の甘さと苦さの配分は同じにはならない。

ジンの香りの届き方も、トニックが動かしている

ジンの香りは、グラスに鼻を近づけたときだけでなく、飲み込むときに口の奥から鼻へ抜ける経路でも感じ取っている。ジントニックで香りの中身を担うのはジンだが、その届き方にはトニックも関わっている。

2012年に米国の研究チームが発表した実験では、ショ糖を加えると、口から鼻へ抜ける香りの強さの評価が上がった。ほかの味では、同じ上がり方は見られなかった。香りが甘味を強める効果は不安定で弱かったのに対し、甘味が香りを強める効果のほうが安定して現れている。

使われたのは特定の香り物質で、ジンで確かめられたわけではない。それでも、同じジンの香りがトニックによって立ったり沈んだりして感じられるなら、ジンの側を疑う前に、トニックの糖を見ておく理由にはなる。

トニックは香りも持ち込む。フィーバーツリーは、インディアン・トニックにメキシコ産ビターオレンジの精油を使っていると説明している。柑橘の皮を効かせたジンと合わせれば、どちらの柑橘なのかはもう切り分けられない。香りは混ざると足し算どおりには感じられず、前に出るものと背景に回るものが入れ替わる。ジンを替えると香りの中身が変わり、トニックを替えると、その香りの届き方が変わる。

次の一杯は、トニックの裏ラベルから

国内で売られるトニックにも、栄養成分表示で100mlあたりの炭水化物が原則として書かれている。糖類の表示は任意だが、海外の表示を見るかぎり、トニックの炭水化物はほとんどが糖だ。原材料欄には、苦味料やキナ、香料、酸味料が並ぶ。ジンの銘柄を比べる前にこの二つの欄を見比べておくと、一杯の味の骨組みがかなり見えてくる。

割る比率も、同じ目で見直せる。ジン50mlに対してトニックを100mlにすれば度数はおよそ13%、200mlなら8%になる。濃いめにつくるのは、アルコールを増やすことであると同時に、トニックの受け持ちを減らすことでもある。グラスの氷が融ければ、その配分は全体ごと薄まっていく。

同じジンを、トニックだけ替えて二杯並べてみる。違いが舌の上にあるのか、鼻へ抜ける香りにあるのかを分けて感じ取れれば、4分の3という数字は量の話ではなくなる。トニックはグラスの4分の3を占めているだけでなく、味のほとんどを引き受けている。

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