コニャックとアルマニャックの違い|蒸留の回数より度数で読む
ブランデーの棚で、コニャックの隣にアルマニャックが並んでいる。どちらもフランス南西部でブドウから造られる蒸留酒で、ラベルにはVSOPやXOの文字も見える。違いを尋ねると、たいていこう返ってくる。コニャックは二回蒸留、アルマニャックは連続式で一回。
ウイスキーを飲む人なら、ここで少し引っかかるかもしれない。連続式蒸留と聞いて思い浮かぶのは、グレーンウイスキーのような軽くクリーンな原酒だ。ところがアルマニャックは、コニャックより素朴で力強い酒として語られることが多い。一度しか蒸留しない酒が、なぜ軽くならないのか。
ワインの段階では、二つの酒はほとんど同じ規則で造られる
二つの産地の生産規則(AOCの仕様書)を並べると、蒸留前の条件はよく似ている。原料はどちらも白ブドウのワインで、蒸留時のアルコール度数はおよそ7〜12%に収まるよう定められている。酸が高く度数の低いワインを良しとし、発酵中に亜硫酸を加えることはどちらの規則でも認められていない。蒸留は収穫翌年の3月31日までに終え、銅製の蒸留器を直火で焚く点も共通している。
違いがあるのはブドウ品種だ。コニャックの畑は、仕様書によれば約98%がユニ・ブランで占められている。アルマニャックでは10品種が認められていて、ユニ・ブランと並んで、1898年にこの土地向けに選抜されたバコ・ブランが主要品種の一つになっている。
それでも、品種の違いだけで二つの酒の性格の差を説明するのは難しい。コニャックとアルマニャックがはっきり分かれるのは、ワインを蒸留器に入れてからだ。
連続式なのに、アルマニャックは度数を上げきらない
グレーンウイスキーの連続式蒸留機は、度数を高く引き上げるための装置だ。スコッチの規則は蒸留時の度数を94.8%未満と定めていて、グレーンはこの上限近くまで蒸留されることが多い。一般に、度数を上げるほど原酒からはエタノール以外の香り成分が抜け、味わいは軽くなる。
アルマニャックの蒸留器は、同じ「連続式」でも狙いが違う。銅のコラムの中の棚段は最大15枚で、そのうちアルコールを濃縮する段は2枚までに制限されている。ワインを流し込みながら一度通すだけで、取り出す原酒の度数は52〜72.4%の範囲と決められている。実際には50%台から60%前後で取り出されることが多い。
コニャックは単式蒸留器で二度蒸留して、度数を引き上げる。二度目の蒸留では出始めと終わりの部分を切り分け、中心の部分だけを原酒にする。仕上がりの上限は73.7%で、生産者は上限近くまで度数を上げるのが普通だ。2022年には、その上限自体が72.4%から引き上げられている。
二回蒸留するコニャックのほうが、一回で止めるアルマニャックより高い度数で原酒を取り出す。 アルマニャックの仕様書も、低い度数で蒸留するからこそ香り成分が多く残り、香りの強さと長い余韻につながると説明している。連続式か単式かより、どこまで度数を上げるかが、原酒に残る香りの量を決める。
アルマニャックでも二回蒸留は認められている。ただし二回蒸留の設備を持つ蒸留所も、伝統的な連続式を毎シーズン最低1基は稼働させなければならない。2012年の時点では、蒸留されたワインの95%が連続式で処理されていた。
一億本を超える酒と、数百万本の酒
蒸留器の外に目を向けると、産業の規模がまるで違う。コニャックの2025年の出荷は1億4,100万本で、中国と米国の関税の影響で前年より15%減ってもなお巨大な産業だ。仕様書によれば消費の95%以上が国外で、約5,500の栽培農家、約110の専業蒸留業者、約300のネゴシアン(酒商)がこの産業を支えている。大手のメゾンが農家から原酒を買い集め、産地や熟成年数の異なる原酒を組み合わせて、毎年同じ味の銘柄を造る。
アルマニャックは年間数百万本の規模とされる。2012年の時点で生産の7割を栽培農家と協同組合が担っていた。多くの農家は自前の蒸留器を持たず、冬になると農家を巡回する移動式の蒸留器で蒸留する。年号入りのボトルも古くから一般的で、生産者側は収穫から10年を過ぎるまでヴィンテージとして売らない方針をとっている。
熟成の規則にも違いがある。コニャックは最低2年の樽熟成が必要だが、アルマニャックは1年でよい。アルマニャックには、樽を使わず不活性の容器で3か月以上休ませた無色の「ブランシュ・アルマニャック」という区分まである。
コニャックのラベルは「どのメゾンが組んだか」を、アルマニャックのラベルは「いつ、どこで生まれたか」を語りやすい。 VSOPやXOはどちらにもある。アルマニャックではそこに収穫年、バ・アルマニャックやテナレーズ、オー・アルマニャックといった産地名、ドメーヌの名前が加わることが多い。
二本を並べたら、度数の話をする
次にコニャックとアルマニャックを並べたときは、蒸留の回数を数えるより、蒸留器から出てきたときの度数を思い出してみるといい。アルマニャックは連続式で一度しか蒸留しないのに、コニャックより低い度数で原酒を取り出す。グラスの中で感じる二つの酒の違いの一部は、その差から始まっている。
ボトルを手に取ったら、ラベルの数字も確かめたい。アルマニャックに年号があれば、それは一つの収穫年の原酒だけを詰めたしるしだ。コニャックにVSOPとあれば、何年分もの原酒をメゾンが組み合わせた結果だ。同じブドウの蒸留酒が、蒸留器と産業の形によって、ここまで違う顔を持つ。