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SPIRITS JOURNAL

ロンドンジンはロンドン産ではない?GIと製法カテゴリーの違い

ロンドンジンはロンドン産ではない?GIと製法カテゴリーの違い

ウェールズのGIなのに「ロンドンジン」。ラベルの地名は何を保証するのか

ウェールズ中部、ダヴィ川の流域でつくられる「ダヴィ・ネイティブ・ボタニカル・ジン」がある。2025年3月、英国の地理的表示(GI)として正式に登録された。GIとは、特定の地域に由来し、その品質や評判、特徴が土地と結びついた産品名を保護する制度だ。

ところが公式の登録簿を開くと、製品カテゴリーの欄にはこう書かれている。「22. London gin」。

ウェールズの地理的表示なのに、ロンドンジン。この二つは、ラベルの上でどうやって同居しているのだろうか。

「ロンドン」は地図ではなく、ジンの中の狭い区画

EUの現行スピリッツ規則は、ジンを段階的に定義している。まずCategory 20の「Gin」。農産物由来のアルコールをジュニパーベリーで香りづけし、ジュニパーの風味が前に出ていること、アルコール度数37.5%以上であることなどが条件だ。

次にCategory 21の「Distilled gin」。ここではジュニパーなどの植物素材とともに蒸留する工程が求められ、できあがったアルコールに香料を混ぜただけのものは含まれない。

そしてCategory 22が「ロンドンジン」である。ロンドンで造ることを求める条文は、どこにもない。 これは産地の区分ではなく、Distilled ginのなかでもさらに条件を絞った製造カテゴリーの名前だ。

なお、以下はEU規則を基準にした説明になる。英国はブレグジット後、グレートブリテンと北アイルランドで参照する法体系が分かれており、細部の文言には差がある。

ロンドンジンを名乗る条件は、かなり具体的だ

では、ロンドンジンは普通のジンと何が違うのか。

EUの現行規則では、ロンドンジンはディスティルド・ジンの一種であり、そのうえで主に次の条件を満たす必要がある。

  • 香味は、使用する天然の植物素材とともにアルコールを蒸留することでつける
  • そこで得られる留出液は70%vol以上
  • 蒸留後に香料やボタニカルのエキスを加えて香味を整えない
  • 着色しない
  • 甘味料は最終製品1リットルあたり0.1グラム以下
  • 完成品は37.5%vol以上

仕上げに使えるものも限られており、基本的には規定を満たしたアルコール、水、ごく微量の甘味料だけだ。法令上は、使用する農産物由来アルコールのメタノール量にも上限が定められている。

ここで重要なのは、ロンドンジンの条件に「ロンドンで造ること」が一つも入っていないことだ。

決められているのは産地ではなく、香りをどうつくり、蒸留後に何をしてよいかという製法である。使うボタニカルの種類まで指定されているわけではないため、ロンドンジンだから特定の味になる、と法律が決めているわけでもない。

そして「70%」にも注意が必要だ。これはボトルのアルコール度数ではなく、蒸留で得られる留出液の度数を指す。完成品は37.5%vol以上であればよい。

「ロンドンドライジン」のドライも、別のカテゴリーを意味しない。ロンドンジンはもともと甘味料が0.1g/L以下に制限されており、規則上は「London gin」に「dry」という語を加えることが認められている。ロンドンドライジンは、ロンドンジンより一段厳しい別カテゴリーではない。

この細かさは、昔から続いてきたものではない

ここまで読むと、古くから伝わるロンドンドライというスタイルを、法律が後から書き写したのだろうと思えてくる。実際の経緯は、もう少し新しい。

1989年のEC規則にもロンドンジンは登場する。ただしそこでの記述は、「ロンドンジンはdistilled ginの一種である」という一行に近いものだった。留出液の度数も、着色も、甘味料の上限も書かれていない。

現在につながる詳細な条件がCategory 22として明文化されたのは、2008年の規則である。それが2019年の現行規則へ引き継がれた。いま私たちが「厳格な基準」として語るロンドンジンは、歴史的な呼び名が、この20年ほどのあいだに制度の言葉へ翻訳された結果でもある。 歴史上のスタイルと、現在の法定仕様は、重なってはいるが同じものではない。

「どこ」を担っているのは、GIという別のレイヤー

冒頭のダヴィ・ネイティブ・ボタニカル・ジンに戻る。英国の登録簿には、二つの欄が並んでいる。保護の種類は「Geographical Indication」、製品のカテゴリーは「22. London gin」。

矛盾しているように見えて、この二つは違う質問に答えている。GIが示すのは、その産品がどこに由来し、その土地とどう結びついているか。ロンドンジンが示すのは、どういう手順と条件で造られたか。whereとhowは、同じラベルの上で衝突せずに並べられる。

だからウェールズの川の名を冠したジンが、ロンドンジンとして登録されることに、制度上の無理はない。

ラベルに書かれた地名らしい言葉は、産地表示かもしれないし、製法の名前かもしれない。次にボトルを手に取るとき、その語が何を保証しているのかを一度だけ問い直してみると、同じラベルから読み取れる情報の量が変わる。

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